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遺伝子組換えカイコ研究開発ユニット

 遺伝子組換えカイコ研究開発ユニットではこれまでに、私達が2000年に世界で初めて開発したカイコの遺伝子組換え技術を活用して、基礎から応用まで幅広い研究開発を進めてきました。2008年には、緑色蛍光タンパク質(GF P)によって光るシルクを作ることに成功し 、それを利用したドレスの試作などを企業・県・大学との協力によって行ってきました。

浜ちりめんで制作した舞台衣装の写真 当ユニットの研究内容は、カイコの未知の遺伝子の役割を調べて応用につなげるための基礎研究を進めること、生物工場として優れているカイコを利用して検査薬や医薬品の原材料になるタンパク質を作らせたり、医薬品のスクリーニングに使えるカイコを作ること 、これまでにない高機能シルクを作るなどの応用研究を進めることです。

 遺伝子組換えカイコを用いた医薬品および高機能シルクの開発を早く実用化に結びつけて、日本の養蚕業の復興および新しい産業の創出を目指しています。写真は蛍光絹糸で織った浜ちりめんで制作した舞台衣装で、浜縮緬工業協同組合との共同で製作したものです。蛍光タンパク質の開発は理化学研究所と(株)医学生物学研究所が共同開発したものです。デザインは成安造形大学の田中秀彦氏によります。

新機能素材研究開発ユニット

セリシンホープとホーンネットシルクの写真 新機能素材研究開発ユニットでは、生物素材としてシルクタンパク質に注目して、医療用分野やコスメティック分野等の産業分野で利用できる新素材の開発をしています。
 カイコが作るフィブロイン・セリシンやスズメバチ幼虫が作るホーネットシルクに関して、それぞれのタンパク質のもつ構造や機能の解析、フィルム、スポンジ、樹脂などの多様な形態・物性をもつ材料への加工プロセスの開発を行っています。左側の写真はセリシン99%以上の絹糸を吐く 「セリシンホープ」という品種のカイコの繭、右側はスズメバチの幼虫が吐糸した繭 「ホーネットシルク」です。

 さらに遺伝子組換えカイコ技術や化学修飾技術を駆使したシルクタンパク質材料への機能付加や物性改変のための技術開発を通して、シルクタンパク質を基盤とした新機能素材の開発も行っています。
 具体的には、シルクフィブロンスポンジで作製した軟骨再生治療用材料やエステティック用材料、セリシンやホーネットシルクのフィルムを利用する角膜再生材料や床ずれ用創傷保護材などの開発を進めています。
 また、ラクトース修飾フィブロインによる肝細胞3次元培養担体、クモ糸タンパク質を含有する組換え絹糸による高強度繊維、一本鎖抗体を融合したアフィニティシルク材料、非天然アミノ酸を導入したシルクタンパク質などの新規素材開発も進めています。

昆虫機能研究開発ユニット

昆虫機能研究開発ユニットの写真 昆虫類は4億年という長い進化の過程で、様々な生息環境に適応する特異的な生体機能を獲得し、全地球的規模で繁栄することに成功しました。これら昆虫類に秘められた特殊な分子機構の解明と模倣技術の開発は、新たなバイオ産業の創出に繋がるものとして、近年注目を浴びています。

 例えば、シロアリは木材の主成分であるセルロースを効率的に分解する酵素を分泌することや、カイコやカブトムシの幼虫は病原菌から身を守る特殊な抗菌タンパク質を持つことを発見しました。
 また、ネムリユスリカの乾燥幼虫は、長期間宇宙空間に曝しても地上で蘇生することを、宇宙ステーションを用いた研究により見出しました。これらの機能を担う生体高分子は、新規の有用物質として活用することが期待できます。

 昆虫機能研究開発ユニットでは、これらのような昆虫の持つ特異的機能をつかさどる遺伝子やタンパク質の分子機構を解明すると共に、遺伝子組換え技術を用いて有用タンパク質を大量生産し、利活用を行うための研究に取り組んでいます。