105.春蚕用蚕品種「黄白」(1990)

山本俊雄、丸山 誠、東 嘉昭、深沢正博、榎島守利、上條伊喜男、中山賢三(1990)蚕の新品種−「春蚕用(日03号×日04号)×(中03号×中04号)」.技術資料 第120号:1-4

1.日03号
  化性:二化性。系統:日中欧固定種。来歴:本種は農林水産省蚕糸・昆虫農業技術研究所において育成した二化性の日中欧固定種である。
  蟻蚕は暗褐色を呈し、蚕児の体色は淡赤系に青系を混じ、斑紋は形である。蚕児の経過は日137号に比べて稚蚕、壮蚕ともにやや遅く、全齢で約1日長い。虫質は強健であるが、眠起の取扱いを適切にし、稚蚕期は特に充実した桑を飽食させることが肝要である。繭は浅縊俵形で、ちぢらは普通である。繭色は眠性形質を示し、雌は黄色、雄は白色となり、繭色により容易に雌雄鑑別ができる。越年卵の卵色は藤鼠である。
  本種と日04号とを交配する場合、両品種の取扱いがほぼ等しいときは、催青着手を同時にすればよい。蚕種の人工孵化は即浸、冷浸ともに6分前後の塩酸浸漬時間が適当である。

2.日04号
  化性:二化性。系統:日中固定種。来歴:本種は農林水産省蚕糸・昆虫農業技術研究所において育成した二化性の日中固定種である。
  蟻蚕は暗褐色を呈し、蚕児の体色は淡赤系に青系を混じ、斑紋は形である。蚕児の経過は日137号に比べて稚蚕、壮蚕ともにやや遅く、全齢で約1日長い。虫質は強健であるが、眠起の取扱いを適切にし、稚蚕期は特に充実した桑を飽食させることが肝要である。
  繭は浅縊俵形で、ちぢらは普通である。繭色は限性形質を示し、雌は黄色、雄は白色となり、繭色により容易に雌雄鑑別ができる。越年卵の卵色は藤鼠である。
  本種と日03号とを交配する場合、両品種の取扱いがほぼ等しいときは、催青着手を同時にすればよい。蚕種の人工孵化は即浸、冷浸ともに6分前後の塩酸浸漬時間が適当である。

3.日03号×日04号
  化性:二化性。系統:日中欧交雑原種
  蟻蚕は暗褐色を呈し、蚕児の体色は淡赤系に青系を混じ、斑紋は形である。蚕児の経過は日137号に比べて稚蚕、壮蚕ともにやや遅く、全齢で約1日長い。虫質は強健であり、桑不足にならないように注意すれば春、夏秋ともに飼育は容易である。
  繭は浅縊俵形で、ちぢらは普通である。繭色は限性形質を示し、雌は黄色、雄は白色となり、繭色により容易に雌雄鑑別ができる。越年卵は藤鼠である。
  本種と中03号と中04号との交雑原種を交配する場合、両交雑原種の取扱いがほぼ等しいときは、本種の催青着手を1日早くすればよい。蚕種の人工孵化は即浸、冷浸ともに6分前後の塩 酸浸漬時間が適当である。

4.中03号
  化性:二化性。系統:中中固定種。来歴:本種は農業水産省蚕糸・昆虫農業技術研究所において育成した二化性の中中固定種である。
  蟻蚕は黒褐色を呈し、蚕児の体色は青系で、斑紋は姫である。蚕児の経過は支146号に比べて稚蚕、壮蚕ともに遅く、全齢で約2日長い。虫質は強健であるが、眠起の取扱いを適切にし、稚蚕期は特に充実した桑を飽食させることが肝要である。
  繭は楕円形で、ちぢらは普通である。繭色は限性形質を示し、雌は黄色、雄は白色となり繭色により容易に雌雄鑑別ができる。越年卵の卵色は帯緑藤鼠である。
  本種と中04号とを交配する場合、両品種の取扱いがほぼ等しいときは、本種の催青着手を1日早くすればよい。蚕種の人工孵化は即浸では5分、冷浸では6分前後の塩酸浸漬時間が適当である。

5.中04号
  化性:二化性。系統:中中固定種。来歴:本種は農林水産省蚕糸・昆虫農業技術研究所において育成した二化性の中中固定種である。
  蟻蚕は黒褐色を呈し、蚕児の体色は青系で、斑紋は姫である。蚕児の経過は支146号に比べて稚蚕、壮蚕ともにやや遅く、全齢で約1日長い。虫質は強健であるが、眠起の取扱いを適切にし、稚蚕期は特に充実した桑を飽食させることが肝要である。
  繭は楕円形で、ちぢらは普通である。繭色は限性形質を示し、雌は黄色、雄は白色となり、繭色により容易に雌雄鑑別ができる。越年卵の卵色は帯緑藤鼠である。
  本種と中03号とを交配する場合、両品種の取扱いがほぼ等しいときは、本種の催青着手を1日遅くすればよい。蚕種の人工孵化は即浸では5分、冷浸では6分前後の塩酸浸漬時間が適当である。

6.中03号×中04号
  化性:二化性。系統:中中交雑原種
  蟻蚕は黒褐色を呈し、蚕児の体色は青系で、斑紋は姫である。蚕児の経過は支146号に比べて稚蚕、壮蚕ともにやや遅く、全齢で約1日長い。虫質は強健であり、桑不足にならないよう注意すれば春、夏秋ともに飼育取扱いは容易である。
  繭は楕円形で、ちぢらは普通である。繭色は限性形質を示し、雌は黄色、雄は白色となり、繭色により容易に雌雄鑑別ができる。越年卵の卵色は帯緑藤鼠である。
  本種と日03号と日04号との交雑原種を交配する場合、両交雑原種の取扱いがほぼ等しいときは、本種の催青着手を1日遅くすればよい。
  蚕種の人工孵化は即浸では5分、冷浸では6分前後の塩酸浸漬時間が適当である。

7.(日03号×日04号)×(中03号×中04号)(愛称:黄白)(この四元交雑種を3・4×3・4と略称する。)
  化性:二化性。系統:日中欧交雑種。適用蚕期:春蚕期
  本種は日中欧四元交雑二化性で、稚蚕人工飼料育用および桑葉育用の品種である。
  蚕児の体色は青系に淡赤系を混じ、斑紋は形である。蚕児の経過は日137号×146号に比べて稚蚕、壮蚕ともに長めで、全齢で約1日長い。稚蚕人工飼料育、桑葉育ともに眠起はよく揃い、飼育取扱いは容易であるが、壮蚕期は蚕座がむれないように通風換気をよくし、5齢期はできるだけ薄飼いをして良桑を飽食させることが大切である。
  繭は楕円形で、ちぢらは普通である。繭色は限性形質を示し、雌は黄繭、雄は白色となる。
  本種は虫質強健で飼育し易く、収繭量、繭層歩合、生糸量歩合、繭糸量が多く、また繭糸長が長く、繭糸繊度が細いなど糸質の優れた限性黄繭蚕品種である。繭糸繊度は2.8デニール内外である。


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