H10.ACT.021

カイコのBacillus thuringiensisδ-内毒素に対する感受性の品種間差異


[要約]
昆虫病原細菌Bacillus thuringiensisの弱毒のδ-内毒素に対するカイコ地理的品種114種の感受性には、品種間で最大約2万5千倍の差がある。最も感受性の高い品種と交雑種との間では約50万倍の著しい差がある。また、東南アジアやヨーロッパ原産の品種に感受性の高いものが多い。
蚕糸・昆虫農業技術研究所・生産技術部・虫害研究室
[連絡先]0298-38-6083
[部会名]蚕糸・昆虫機能
[専門] 作物虫害
[対象] 昆虫類
[分類] 研究

[背景・ねらい]
近年、コナガなどの鱗翅目害虫で、微生物殺虫剤として使用されているBacillus thuringiensis製剤(BT剤:δ-内毒素が主な有効成分)に対して著しい抵抗性の発達が認められており、対処方法の開発が急務となっている。そこで抵抗性発達機構解明のモデルとなる実験系の確立を目的に、蚕品種のδ-内毒素に対する感受性の調査を行う。

[成果の内容・特徴]

  1. 遺伝子組換え技術により作出された、カイコ交雑種に対して弱毒のδ-内毒素(キメラ毒素、毒素遺伝子型=CrylAb)をカイコ地理的品種114種のふ化幼虫へ経口投与し、各品種のLC50値を比較すると、毒素への感受性に最大約2万5千倍の品種間差異が見られる(表1)
  2. 最も感受性の高かった東南アジア種の1品種(輪月)と交雑種(支146号×日137号)の比較では感受性に約50万倍の差が見られる(表1)
  3. 地理的品種のなかでは、東南アジア種と欧州種に感受性の高い品種が多く見られる(図1)
  4. 交雑種はその親である2種類の原種に比べてLC50値が高く、雑種強勢の可能性が示唆される(表1)

[成果の活用面・留意点]

  1. δ-内毒素に対するカイコ品種間の感受性に著しい差が見られることから、カイコをモデル昆虫として利用することで、鱗翅目害虫のBT剤抵抗性獲得機構の究明や、抵抗性獲得への対処法の開発への貢献が期待される。
  2. カイコの品種間差異について、個体レベルと細胞及び分子レベルとの関係を調査する必要がある。

[その他]
研究課題名:バチルス菌の産生する殺虫性毒素の特異性評価法
予算区分 :バイテク(昆虫機能)
研究期間 :平成10年度(平成8〜11年度)
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