カメムシ類における幼若ホルモン活性の生物検定法


[要約]
幼若ホルモンのカメムシ類に対する変態阻害作用を、前翅長等の客観的な基準に基づいて評価することによって、幼若ホルモン活性を示す物質をスクリーニングするための生物検定法を確立した。
蚕糸・昆虫農業技術研究所・生体情報部・増殖機構研究室
[連絡先] 0298-38-6110
[部会名] 蚕糸・昆虫機能
[専門]  昆虫機能
[対象]  昆虫類
[分類]  研究

[背景・ねらい]
幼若ホルモンは昆虫の成長・発育を司る主要な昆虫ホルモンの一つである。農業害虫として重要な種を多数含むカメムシ類においても幼若ホルモンに関する研究が行われてきた。しかし、カメムシ類では幼若ホルモンそのものの化学構造さえ未だ明らかにされていない等、不明の部分が多く残されている。このグループの幼若ホルモンを単離し化学構造を明らかにするためには、幼若ホルモン活性を容易に判定するための生物検定法の確立が急務とされている。そこで、客観的に測定しうる形質に基づいた生物検定法の確立を試みる。

[成果の内容・特徴]

  1. チャバネアオカメムシの終齢初期の幼虫に、幼若ホルモン分泌器官であるアラタ体を移植すると、次の脱皮後正常な成虫よりも前翅や小盾板が短い個体が出現した(図 1B)。そのような個体の触角は正常な成虫のものより1節少ない4節からなり(図 1E)、幼虫のそれと同じであった。
  2. 化学合成された幼若ホルモンVやJHB3、幼若ホルモン活性物質の1種であるピリプロキシフェンを終齢0日目の幼虫の腹部背面に塗布することによって、アラタ体移植と同様な効果が観察された。これらの塗布実験では処理量に応じて前翅や小盾板の長さおよび幼虫型の触角を持つ個体の割合が変化した(図 2)
  3. これらの結果から終齢0日目の幼虫の腹部にサンプルを塗布し、次の脱皮後、前翅および小盾板の長さを測り、また触角の形態を観察することによって、幼若ホルモン活性を検定することが可能となった。

[成果の活用面・留意点]

  1. この検定法を用いてカメムシ類の幼若ホルモンの単離・同定の研究を進めることが可能となる。
  2. カメムシ類に効果を示す幼若ホルモン活性物質の検索が容易となり、これを利用したカメムシ類の防除法・発育制御法の開発が期待できる。

[その他]
研究課題名:有用昆虫の随時供給技術の開発
予算区分 :バイテク(昆虫機能)
研究期問 :平成7年度(平成5〜11年度)
研究担当者:小滝豊美・田中誠二・渡邊匡彦
発表論文等:1)The corpus allatum of a stink bug produces a new JH.
       7th lnternational Congress of lnvertebrate Reproduction.Abstract, p93, 1995
      2)カメムシ類の幼若ホルモン:活性分画の分離
       昆虫学会・応動昆合同大会講要, p200, 1995
      3)Evidence for a new juvenile hormone in a stink bug, Plautia stali.
       J.lnsect Physiol.(in press), 1996

[ 戻 る ]