スギ花粉症緩和米のマウスでの有効性確認
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[要約]
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スギ花粉アレルゲンT細胞エピトープを集積する米(スギ花粉症緩和米)を開発した。花粉症モデルマウスへの投与試験の結果、アレルギー反応やくしゃみの回数が抑えられたことから、スギ花粉症緩和米を食べることで、アレルギー症状が緩和されることが実証された。
農業生物資源研究所・新生物資源創出研究グループ・遺伝子操作研究チーム
[連 絡 先]029-838-8373
[分 類]技術開発
[キーワード]スギ花粉症、遺伝子組換え、アレルゲン免疫療法、T細胞エピトープ
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[背景・ねらい]
- アレルゲン免疫療法は、アレルギーの原因となるアレルゲンやその一部であるT細胞エピトープを投与して、アレルゲンに対する過敏性を抑制する治療法であり、アレルギーの根本的な治療法として期待されている。そこで私たちは、遺伝子組換え技術を利用して、スギ花粉アレルゲンのT細胞エピトープを集積させた米(スギ花粉症緩和米)を開発した。さらに、スギ花粉症のモデルマウスを用いて、スギ花粉症緩和米の有効性を調査した。
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[成果の内容・特徴]
- スギ花粉症緩和米を開発するため、スギ花粉アレルゲンT細胞エピトープをイネ種子の中で作らせる発現プラスミドを構築した(図1)。
- 本研究で開発したスギ花粉症緩和米の有効性を検討するため、花粉症モデルマウスへの経口投与実験を計画、実施した(図2)。
- 遺伝子を導入していない普通の米を食べたマウスと比較して、スギ花粉症緩和米を食べたマウスでは、アレルギー反応の指標となるT細胞の反応性やIgE抗体の産生量が抑制された(図3)。
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さらに、スギ花粉症の症状に対する効果を調べるため、マウスのくしゃみの回数を測定したところ、スギ花粉症緩和米を食べたマウスではくしゃみの回数が抑制された(図4)。この結果から、スギ花粉症緩和米を経口投与することにより、アレルギー症状が緩和されることが明らかになった
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[成果の活用上の留意点・波及効果・今後の展望等]
- 今後、スギ花粉症緩和米の実用化を目指して、生物多様性への影響評価や食品としての安全性を確かめる。
- T細胞エピトープを米の中で生産できることから、ご飯を食べて花粉症を緩和するという極めて簡便な治療法として活用できる。
- 消費者へ利益を提供する実用的組換え作物の具体例として、その利点や可能性を社会にアピールするという波及効果が期待される。
[具体的データ]
図1:発現プラスミドの構造 |
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図2:投与実験スケジュール |
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図3:IgE 抗体産生抑制効果 |
図4:くしゃみ抑制効果 |
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[その他]
研究課題名 :遺伝子組換えにより健康機能性を増強した米の作出
予算区分 :アグリバイオ
中期計画課題コード:B131-6
研究期間 :16〜20年度
研究担当者 :高岩文雄、高木英典、楊麗軍
発表論文等 :Takagi H, Hiroi T, Yang L, Tada Y, Yuki Y, Takamura K, Ishimitsu R, Kawauchi
H, Kiyono H, Takaiwa F (2005) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102:17525-17530.
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