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プレスリリース
生物研
平成27年12月1日
国立研究開発法人 農業生物資源研究所

幼若ホルモンがサナギ化を抑えるメカニズムを解明

−昆虫のみに効果のある農薬の開発へ−

ポイント
  • 幼若(ようじゃく)ホルモンがサナギ化を抑えるメカニズムを、世界で初めて解明しました。
  • 幼若ホルモンによって産生が促されるタンパク質は、サナギ化遺伝子の活性化を直接抑えることで、サナギ化を抑制していました。
  • このタンパク質の働きを阻害することで、昆虫のみに効果のある農薬の開発が可能になります。
概要
  1. 農業生物資源研究所(生物研)は、昆虫の幼若(ようじゃく)ホルモンが働くメカニズムを世界で初めて解明しました。
  2. 昆虫の成長に必要な幼若ホルモンには、幼虫をサナギにさせない働きがありますが、どのようにサナギにさせないのかは不明でした。
  3. 幼若ホルモンが働くと、サナギ化遺伝子を始動させる塩基配列に、幼若ホルモンによって産生が促されるタンパク質(Kr-h1、ケーアールエイチワン)が結合し、サナギ化遺伝子の活性化を抑制する、というメカニズムが明らかになりました。
  4. Kr-h1は昆虫にしかないことから、Kr-h1の働きを阻害する薬剤を見つけることができれば、幼虫が十分に成長する前にサナギ化させることで、昆虫だけを駆除できる環境負荷の少ない農薬の開発が可能になります。
  5. この成果は、米国の生化学分子生物学雑誌(The Journal of Biological Chemistry)で10月30日にオンラインで先行発表されました。
予算:科学研究費補助金・若手B「幼若ホルモンが有する変態抑制作用の分子メカニズム解明」(平成25〜27年度)
プレスリリース全文 [PDF:381KB]
【発表論文】
  1. Takumi Kayukawa, Keisuke Nagamine, Yuka Ito, Yoshinori Nishita, Yukio Ishikawa, and Tetsuro Shinoda (2015). Krüppel homolog 1 inhibits insect metamorphosis via direct transcriptional repression of Broad-complex, a pupal specifier gene. The Journal of Biological Chemistry.
問い合わせ先など
研究代表者:農業生物資源研究所 理事長 廣近 洋彦
研究推進責任者:農業生物資源研究所 昆虫科学研究領域 領域長 野田 隆志
研究担当者:農業生物資源研究所 昆虫科学研究領域
 昆虫成長制御研究ユニット 主任研究員 粥川 琢巳
 電話:029-838-6075 E-mail:kayu@affrc.go.jp
 昆虫成長制御研究ユニット ユニット長 篠田 徹郎
 東京大学 大学院農学生命科学研究科 教授 石川 幸男
 東京大学 大学院農学生命科学研究科 特任研究員 長峯 啓佑
 北海道大学 大学院理学院 助教 西田 義憲
広報担当者:農業生物資源研究所広報室長 谷合 幹代子
 電話:029-838-8469
本資料は筑波研究学園都市記者会,文部科学省記者会、科学記者会、農政クラブ,農林記者会,農業技術クラブに配付しています。

【掲載新聞】 12月2日日本農業新聞
12月3日化学工業日報
12月4日日刊工業新聞
12月10日日経産業新聞
1月1日科学新聞
1月10日農業協同組合新聞

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