平成26年10月29日 独立行政法人 農業生物資源研究所 国立大学法人九州大学 国立大学法人名古屋大学

トビイロウンカに幅広い抵抗性を有するイネの作出に弾み

−トビイロウンカを餓死させる遺伝子の特定に成功−

1. 独立行政法人農業生物資源研究所（生物研）、九州大学及び名古屋大学は、トビイロウンカに対するイネの抵抗性遺伝子BPH26について、世界で初めてその配列を決定するとともに、その機能を明らかにしました。
2. トビイロウンカは、中国より飛来し、イネの師管1)から栄養分を摂取して枯死させる害虫です。古来より、日本の稲作に甚大な被害をもたらしてきましたが、主に薬剤防除に頼ってきました。
3. 平成17年頃から、トビイロウンカの多発生地である中国から、薬剤抵抗性のトビイロウンカが、日本に飛来するようになり、再び被害が深刻になってきています。このようなトビイロウンカの被害を軽減するためには、新たな薬剤を開発するか、抵抗性遺伝子を利用したイネ品種の開発が必要となります。しかし、薬剤抵抗性を持つと同時に、東南アジアで使用されている単一の抵抗性遺伝子を導入した品種を加害するトビイロウンカ（加害性バイオタイプ2)）も出現しています。
4. インドの栽培イネが持つBPH25とBPH26と名付けられた二つの遺伝子が同時に存在すると、現在飛来する加害性バイオタイプのトビイロウンカにも抵抗性を示すことが、これまでに明らかにされていました。
5. 今回単離に成功したBPH26遺伝子を導入したイネでは、トビイロウンカが針のような口をイネの師管まで挿入するものの、師管液を吸汁できず、餓死することが明らかとなりました。さらに、BPH26タンパク質の構造は、カビなどの病原菌に対するイネの抵抗性タンパク質とよく似ていることが分かりました。
6. 本研究グループは、もう一つのBPH25遺伝子のDNAマーカーの作出にも目途をつけています。これら二つの遺伝子のDNAマーカーを用いることにより、日本に飛来するトビイロウンカに対して抵抗性を示すイネの開発を、今後２-３年中に開始できる見込みです。

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