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生物研カザン大学沖縄科学技術大学基礎生物学研究所金沢大学
文部科学記者会、科学記者会、
筑波学園記者会、農政クラブ、
農林記者会、農業技術クラブ、
沖縄県政記者クラブへ同時配布
平成26年9月12日
独立行政法人 農業生物資源研究所
カザン大学
沖縄科学技術大学院大学
基礎生物学研究所
国立大学法人金沢大学

極限乾燥耐性生物ネムリユスリカのゲノム概要配列を解読

−生物がカラカラに乾いても死なないメカニズムの解明へ−

このたび、日本、ロシア、米国の国際研究チームは、アフリカ中央部の半乾燥地帯の岩盤地域に生息し、極度の乾燥条件に耐えうる能力を持つネムリユスリカ※1のゲノム塩基配列を解読し、その概要配列を明らかにするとともに、干からびても死なないネムリユスリカに極限的な乾燥耐性をもたらす遺伝子多重化領域と乾燥時特有の遺伝子発現調節機構を発見することに成功しました。今後、極限乾燥耐性をもたらす遺伝子を利用することで、iPS細胞や受精卵、血液などの常温乾燥保存法の開発の促進が期待されます。本研究成果は英科学誌Nature Communications(ネイチャー・コミュニケーションズ)電子版に9月12日に掲載されます。

〈概要〉
  1. 本研究は、農業生物資源研究所(生物研)が中心となって、カザン大学(ロシア)、沖縄科学技術大学院大学、基礎生物学研究所、金沢大学、モスクワ大学(ロシア)、ロシア物理化学医学研究所、ヴァンダービルト大学(米国)が共同で、極限的な乾燥耐性をしめす生物であるネムリユスリカのゲノム塩基配列の解読を行いました。解読の結果、ネムリユスリカのゲノム上には、およそ17,000個の遺伝子が存在する事が明らかになりました。
  2. 解読したネムリユスリカのゲノムを、ネムリユスリカの近縁種で乾燥耐性が全く無いヤモンユスリカ※2のゲノム塩基配列と比較した結果、ネムリユスリカのゲノムにしかない遺伝子が多重化した領域(ARId)※3を発見しました。また、研究チームは、ネムリユスリカに特有な乾燥応答性の遺伝子発現調節機構が存在する事も発見しました。
  3. ARIdには、新規な抗酸化因子や老化タンパク質修復酵素、ストレスタンパク質の一種であるLEAタンパク質※4など、生体分子保護機能をもつ遺伝子が多重化※5して存在していることが明らかになりました。
  4. 乾燥耐性に必須な遺伝子の一つであるLEAタンパク質遺伝子は、細菌からの水平伝播※6によってネムリユスリカが獲得した事が示されました。
  5. 約2500万年前に他のユスリカから分岐したネムリユスリカが、乾燥無代謝休眠※7を実現した進化の過程がわかりました。
  6. 極限的な乾燥耐性をもたらす遺伝子を利用することで、ヒトのiPS細胞や家畜の受精卵及び血液などの常温乾燥保存法の開発促進が期待されます。
  7. 本研究は、科学研究費補助金・新学術領域研究「複合適応形質進化の遺伝子基盤解明」(平成23〜26年度)の一環として行われました。
プレスリリース全文 [PDF:705KB]
【発表論文】
発表先および発表日:
Nature Communications(ネイチャー・コミュニケーションズ)オンライン版:
平成26年9月12日(金曜日) 10時00分 (日本時間 同日18時00分)
論文タイトル:Comparative genome sequencing reveals genomic signature of extreme desiccation tolerance in the anhydrobiotic midge(比較ゲノム解析が解き明かしたネムリユスリカの極限乾燥耐性)
Nature Communications, DOI: 10.1038/ncomms5784
著者:Gusev O, Suetsugu Y, Cornette R, Kawashima T, Logacheva MD, Kondrashov AS, Penin AA, Hatanaka R, Kikuta S, Shimura S, Kanamori H, Katayose Y, Matsumoto T, Shagimardanova E, Alexeev D, Govorun V, Wisecaver J, Mikheyev A, Koyanagi R, Fujie M, Nishiyama T, Shigenobu S, Shibata TF, Hasebe M, Okuda T, Satoh N, Kikawada T
本件お問い合わせ先
<研究について>
研究推進責任者:
(独)農業生物資源研究所 遺伝子組換え研究センター
 昆虫機能研究開発ユニット 主任研究員 黄川田 隆洋
 TEL: 029-838-6170 E-mail:kikawada@affrc.go.jp
主要研究担当者:
(独)農業生物資源研究所 農業生物先端ゲノム研究センター
 昆虫ゲノム研究ユニット 主任研究員 末次 克行
(独)農業生物資源研究所 遺伝子組換え研究センター
 昆虫機能研究開発ユニット 主任研究員 コルネット・リシャー
カザン大学 基礎生物医学生物学研究所 助教 グセフ・オレグ
 TEL: 090-7596-9811 E-mail:gaijin.ru@gmail.com
沖縄科学技術大学院大学 マリンゲノミックスユニット 教授 佐藤 矩行
 TEL: 098-966-8634 E-mail:norisky@oist.jp
基礎生物学研究所 生物進化研究部門 教授 長谷部 光泰
 TEL: 0564-55-7628 E-mail:mhasebe@nibb.ac.jp
基礎生物学研究所 生物機能解析センター 特任准教授 重信 秀治
 TEL: 0564-55-7670 E-mail:shige@nibb.ac.jp
金沢大学 学際科学実験センター 助教 西山 智明
 TEL: 076-265-2777 E-mail: tomoakin@staff.kanazawa-u.ac.jp
<各研究機関について>
(独)農業生物資源研究所 広報室長 谷合 幹代子
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沖縄科学技術大学院大学
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基礎生物学研究所 広報室 特任助教 広報・科学コミュニケーション担当 倉田 智子
 TEL: 0564-55-7628 E-mail:press@nibb.ac.jp
金沢大学 総務部 広報室 本庄 淑子
 TEL: 076-264-5024 E-mail:koho@adm.kanazawa-u.ac.jp

【掲載新聞】   9月13日読売新聞、常陽新聞
 9月14日読売新聞(大阪)、日本経済新聞
 9月15日毎日新聞
 9月18日朝日新聞、朝日新聞(大阪)
10月10日 科学新聞

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