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世界初、ガラス化保存未成熟卵子から子ブタを生産ポイント
1) 凍結防止剤とともに急速冷却する卵子の超低温保存法(詳細は「用語の解説」参照) 2) 成熟前で受精する能力を持たない卵子(詳細は「用語の解説」参照) 3) 受精卵の発生段階のひとつ(詳細は「用語の解説」参照) 概要
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詳細情報
生物の遺伝的多様性を維持することは、将来農産物や医薬品、地球環境保護に活用できる素材を確保するために重要であり、家畜についても生体あるいは細胞での遺伝資源の保存が行われています。特に、精子、卵子、胚といった細胞レベルでの保存は、生体に比べはるかに効率的で省スペースで防疫上もリスクの少ないことから、より多くの遺伝資源を保存できます。また育種改良の上でも育種素材の選択の幅が広がるなどの大きなメリットをもたらします。しかし家畜では、精子・卵子及び胚の凍結あるいはガラス化による超低温保存が可能なのはウシのみです。一方、ブタは他の家畜に比べ特に生殖細胞の超低温保存が難しく、これまでは、凍結精子により雄の遺伝資源を保存してきました。最近になって、ブタ胚のガラス化による超低温保存が可能となってきていますが、ブタ卵子は低温傷害を受けやすいため超低温保存による雌の遺伝資源の保存やガラス化保存卵子からの子ブタの生産は成功していませんでした。
ガラス化保存した卵子の加温後の生存率や発生能が低く、移植可能胚の生産数が少ないこともガラス化保存卵子由来の子ブタが得られていない原因のひとつと考えられています。未成熟の卵核胞期の卵子をガラス化保存することにより、成熟卵子をガラス化保存するよりも正常胚への発生率が高まることをこれまでに報告しましたが、ガラス化保存した未成熟卵子の加温後の生存率が低いという問題が残されていました(Somfai et al., 2012)。そこで、加温後の卵子の生存性を向上させる加温条件を明らかにすることにより、多数の移植可能胚を作製・移植することが可能となり、世界初の子ブタの生産に成功しました。
Tamas Somfai, Koji Yoshioka, Fuminori Tanihara, Hiroyuki Kaneko, Junko Noguchi, Naomi Kashiwazaki, Takashi Nagai and Kazuhiro Kikuchi. Generation of live piglets from cryopreserved oocytes for the first time using a defined system for in vitro embryo production. PLOS ONE (DOI: 10.1371/journal.pone.0097731)
1) ガラス化保存 高濃度の凍結防御剤(エチレングリコール、プロピレングリコールなど)を含むガラス化液を用いて、室温域から液体窒素温度域(-196度)に急速に冷却することにより、氷晶(氷の結晶)を形成させずに、細胞内外ともにガラス化状態(結晶化せずに液体の粘性が高くなっていき、そのまま固体となること)とする超低温保存法です。使用するときには、加温することにより液体状態に戻します。ここでは、氷晶形成していないガラス化状態から液体に戻すことから融解ではなく加温という表現を使用しています。 2) 未成熟卵子 未成熟卵子は受精能を持たない成熟前の卵子です。未成熟卵子は、体外成熟培養を行うことにより減数分裂を再開し、第1極体を放出し、受精能を持つ成熟卵子(減数分裂第2分裂中期)となります。 3) 胚盤胞 哺乳類の初期発生で、受精後に細胞分裂を繰り返し、将来こどもになる内部細胞塊細胞と胎盤などになる栄養膜細胞に分化した胞状の胚(受精卵)をいいます。 4) 移植(胚移植あるいは受精卵移植) 提供動物から回収した胚(受精卵)や体外受精卵を受胚動物の子宮に移植し、借り腹により胎子を育てて、動物個体を生産する技術です。 5) 固体表面ガラス化法 液体窒素に浮かせたアルミホイル上に卵子を含む2〜3マイクロリットルのガラス化液を滴下し、超急速冷却してガラス化する方法です。
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