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生物研
プレスリリース
平成25年12月11日
独立行政法人農業生物資源研究所

細胞内タンパク質の特定領域の働きを詳細に評価できる
新しい技術の開発に成功

- 細胞内タンパク質の機能解析の加速化に貢献 -

ポイント
  • 細胞内には酵素タンパク質や遺伝子の働きを調節するタンパク質などがあり、これらタンパク質は、それぞれ独自の働きをするために特異的な構造を持つ複数の領域から構成されています。
  • これまでタンパク質のもととなる遺伝子を欠損させることでタンパク質の働きが調べられてきましたが、細胞内のタンパク質の特定の領域の働きを個別に調べることはできませんでした。
  • 今回、抗体が特定のタンパク質の領域に対して特異的な結合活性を持つという性質を利用し、抗体のうち、特定のタンパク質に結合する部分のみを細胞内に作りだすことで、標的となる細胞内タンパク質の特定の領域の働きを阻害させることに成功しました。
  • 本成果は、様々な細胞内タンパク質の働きを明らかにするのに役立つと期待されます。

概要

1.細胞内には酵素タンパク質や遺伝子の働きを調節するタンパク質などがあり、これらタンパク質はそれぞれ独自の働きをするために特異的な構造を持つ複数の領域から構成されています。これまで広く利用されてきた遺伝子欠損(ノックアウト)法では、特定のタンパク質全体としての機能は評価できましたが、タンパク質を構成している個々の領域の役割を個別に評価することはできませんでした。
2.抗体が特定のタンパク質の領域に対して特異的な結合活性を持つという性質を利用し、抗体の特定タンパク質への結合に関わる部分のみを細胞内で作らせて、タンパク質の特定の領域に結合させ、その働きを阻害させることができれば、様々な細胞内タンパク質の働きを非常に効率よく調べることが可能となります。
3.独立行政法人農業生物資源研究所(生物研)は、T細胞1) の免疫のシグナル伝達系で重要な役割を果たしているWASタンパク質2)の特定の領域を標的とした抗体に着目し、この抗体のWASタンパク質への結合に関わる部分のみからなる「単一ドメイン抗体3)」を細胞内で発現させた遺伝子組換えマウスを作ることに成功しました。
4.単一ドメイン抗体は、T細胞内でWASタンパク質の特定の領域に強く結合し、その働きを阻害することで、T細胞の免疫応答を抑制しました。このことから、単一ドメイン抗体を用いることで細胞内タンパク質の特定の領域の働きを特異的に阻害できることが証明されました。
5.本研究により、単一ドメイン抗体は、タンパク質の特定領域の働きを個別に評価できるこれまでにない新しい技術として、様々なタンパク質の機能解析に大きく貢献できると期待されます。
6.この成果は、10月21日に英国科学雑誌Scientific Reportsに発表されました。
予算 :運営費交付金
特許 :特許第4938263号
プレスリリース全文 [PDF:698KB]
【発表論文】

Sato M, Sawahata R, Sakuma C, Takenouchi T, Kitani H. Single domain intrabodies against WASP inhibit TCR-induced immune responses in transgenic mice T cells. Scientific Reports DOI: 10.1038/srep03003

問い合わせ先など

研究代表者:(独)農業生物資源研究所 理事長 廣近 洋彦
研究推進責任者:(独)農業生物資源研究所 動物科学研究領域領域長 粟田 崇
(独)農業生物資源研究所 動物科学研究領域
 動物生体防御研究ユニットユニット長 木谷 裕
研究担当者:(独)農業生物資源研究所 動物科学研究領域
 動物生体防御研究ユニット主任研究員 佐藤 充
 電話:029-838-6041 E-mail :mitsuru.sato@affrc.go.jp
広報担当者:(独)農業生物資源研究所広報室長 井濃内 順
 電話:029-838-8469
本資料は文部科学記者会、科学記者会、筑波研究学園都市記者会、農政クラブ、農林記者会、
農業技術クラブに配付しています。

【掲載新聞】 12月12日:化学工業日報、12月13日:日経産業新聞

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