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プレスリリース
平成24年6月6日
独立行政法人 農業生物資源研究所

ダイズの日長反応性を介した開花制御に関わる遺伝子を解明

- 栽培地域の日長に応じた品種の開発による安定生産に期待 -


ポイント
  • ダイズの開花期に最も大きな効果を及ぼす遺伝子( E1 遺伝子)を明らかにしました。
  • 日の長さに反応して開花する過程での E1 遺伝子の働きを明らかにしました。
  • 栽培地域に適した品種開発への利用が期待されます。

概要

1.   植物は日の長さ (日長) の変化を感知して開花の時期を制御する性質 (日長反応性) を持ちます。ダイズは日の長さが短くなると開花が促進される短日植物です。この日長反応性に最も大きな効果を示す E1 という遺伝子座が存在することは1927年に報告されていましたが、その遺伝子の実体は分っていませんでした。

2.   今回、(独) 農業生物資源研究所 (生物研) は、中国科学院東北地理農業生態研究所、国立大学法人北海道大学、国立大学法人佐賀大学、公益財団法人かずさDNA研究所と共同で、世界で初めて E1 遺伝子を明らかにしました。

3.    E1 遺伝子はこれまでに機能の報告がなされていない遺伝子でした。昼の長さが長い長日条件では、 E1 遺伝子の発現が誘導され、開花に直接関わるフロリゲン遺伝子の発現を抑制するのに対し、昼の長さが短い短日条件では、 E1 遺伝子の発現が抑制され、フロリゲン遺伝子の発現が促進されることで開花に至ることが分りました。

4.   ダイズ種内には E1 遺伝子の一部が変化した変異遺伝子を持つ品種が存在します。これらの変異遺伝子を利用することにより、約20日の幅で開花期を制御できることが分りました。変異遺伝子を識別できるDNAマーカーを用いた選抜によって、栽培地域の日長に応じた品種を開発することにより、ダイズの安定生産につながっていくことが期待されます。

5.   この成果は、平成24年5月22日に米国科学アカデミー紀要で公表されました。

予算区分:農林水産省委託プロジェクト「新農業展開ゲノムプロジェクト」 (平成19-24年度)
日本学術振興会 科学研究費補助金「基盤研究(A)」 (平成18-21年度)
参考資料 [PDFファイル:334キロバイト]
発表論文: Xia Z, Watanabe S, Yamada T, Tsubokura Y, Nakashima H, Zhai H, Anai T, Sato S, Yamazaki T, Lu S, Wu H, Tabata S, Harada K (2012)
Positional cloning and characterization reveal the molecular basis for soybean maturity locus E1 that regulates photoperiodic flowering.
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
Published online: May 22, 2012; doi:10.1073/pnas.1117982109 OPEN ACCESS

問い合わせ先など:

研究代表者:(独)農業生物資源研究所 理事長石毛 光雄
研究推進責任者:(独)農業生物資源研究所 農業生物先端ゲノム研究センター
ダイズゲノム育種研究ユニット ユニット長 石本 政男
元 (独)農業生物資源研究所 基盤研究領域
ダイズゲノム研究チーム チーム長 原田 久也
研究担当者:(独)農業生物資源研究所 農業生物先端ゲノム研究センター
ダイズゲノム育種研究ユニット 研究員 渡辺 啓史
電話:029-8383-7452、電子メール:nabemame@affrc.go.jp
中国科学院 東北地理農業生態研究所 ダイズ分子育種実験室 教授 夏 正俊
国立大学法人 北海道大学大学院 農学院 生物資源科学専攻 講師 山田 哲也
国立大学法人 佐賀大学農学部 応用生物科学科 准教授 穴井 豊昭
公益財団法人 かずさDNA研究所 植物ゲノム研究部 室長 佐藤 修正
広報担当者:(独)農業生物資源研究所 広報室長井濃内 順
電話:029-838-8469

【掲載新聞】 6月7日(木曜日):化学工業日報、日経産業新聞

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