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プレスリリース
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平成22年9月21日
独立行政法人 農業生物資源研究所

遺伝子の働きを抑える複合体ができるしくみが明らかに

- 植物ウイルス病の新たな防除策の開発につながる成果 -


ポイント
  • 短いRNA分子により植物の遺伝子の働きを試験管内で抑えることに初めて成功し、その仕組みを明らかにしました。
  • 短いRNA分子の機能を増強することによりウイルスによる病害を抑えることが可能になると期待されます。

概要

1. (独)農業生物資源研究所は、試験管内で短いRNA分子(短鎖RNA*1)によって植物の遺伝子の働きを抑えること(RNAサイレンシング)に世界で初めて成功しました。
2.RNAサイレンシングは遺伝子の働きを抑える動植物に共通してみられる仕組みで、体を形作る過程やウイルスの防御など、重要な生命現象に深く関わっています。RNAサイレンシングでは、短鎖RNAとタンパク質の複合体がタンパク質合成に関わるRNAを切断することにより、遺伝子の働きを妨げます。今回の成果は、この複合体がどのように形成されるかをはじめて明らかにしたものです。
3.植物は侵入したウイルスの増殖を抑えるRNAサイレンシングの機能を備えています。しかし、一部のウイルスはRNAサイレンシングに対抗する仕組みをもっているため、ウイルスが増殖して植物の病気が進行します。今回の成果は、ウイルスによる病害等を、RNAサイレンシングを用いて制御する手法の開発につながると期待されます。
4.この成果は、2010年7月30日に米国の分子生物学専門誌である Molecular Cell に公開されました。
予算:日本学術振興会 科学研究費補助金(平成19-20年度、平成21-23年度)
科学技術振興機 戦略的創造研究推進事業 さきがけ(平成19-22年度)
参考資料 [PDFファイル:263キロバイト]
Taichiro Iki, Manabu Yoshikawa, Masaki Nishikiori, Mauren C. Jaudal, Eiko Matsumoto-Yokoyama, Ichiro Mitsuhara, Tetsuo Meshi, and Masayuki Ishikawa
In Vitro Assembly of Plant RNA-Induced Silencing Complexes Facilitated by Molecular Chaperone HSP90
Molecular Cell, Volume 39, Issue 2, 30 July 2010, Pages 282-291, doi:10.1016/j.molcel.2010.05.014
Received 20 January 2010; revised 22 April 2010; accepted 13 May 2010. Published online: June 3, 2010. Available online 3 June 2010.
本論文が、2010年10月21日木曜日、「Faculty of 1000」に選ばれました。

問い合わせ先など

研究代表者:(独)農業生物資源研究所 理事長石毛 光雄
研究推進責任者: (独)農業生物資源研究所植物科学研究領域長飯  哲夫
研究担当者:(独)農業生物資源研究所植物・微生物間相互作用研究ユニット
上級研究員 石川 雅之
電話番号:029-838-7009、電子メール:ishika32@affrc.go.jp
特別研究員井木 太一郎
主任研究員吉川  学
主任研究員光原 一朗
広報担当者:(独)農業生物資源研究所 広報室長川崎建次郎
電話番号:029-838-8469


【掲載新聞】 9月22日水曜日:化学工業日報

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