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善玉コレステロールの輸送体がカイコの繭に色を付けることを発見- 新たな着色繊維の創出やヒトの眼病や感染症の理解につながると期待 -ポイント
概要農業生物資源研究所、国立感染症研究所、九州大学及び富士化学工業の研究グループは、カイコの繭に黄色の色を付ける遺伝子のひとつを特定し、それが善玉コレステロールの輸送体と極めてよく似た構造であることを明らかにしました。 カイコの繭は、桑の葉を食べる際に葉の中に存在する色素(カロテノイド)が吸収され、絹タンパク質産生器官まで輸送されることにより黄色に着色されます。私たちの研究グループは、絹タンパク質産生器官細胞内にカロテノイドが取り込まれる際に重要な役割を果たす遺伝子を特定し、その遺伝子がコードするタンパク質の構造がコレステロールの輸送体と類似していることを明らかにしました。このことは、カイコの繭の着色の仕組みがヒトで善玉コレステロールを肝臓に取り込む仕組みとよく似ていることを示唆しています。 本研究で特定された繭に色を付ける遺伝子は、新たな着色絹糸の創出のためのツールとなり得ます。一方、ヒトにおいて善玉コレステロールの輸送体はC型肝炎ウイルスの感染に必須であることから、輸送体の構造や機能の解析は、肝炎ウイルスの細胞内侵入機構の解明に貢献すると思われます。また、加齢黄斑変性症の予防にルテイン等のサプリメントが効果的であることから、善玉コレステロールの輸送体によるルテインの取り込みに注目が集まっています。このように、カイコの繭の着色の機構は、ヒトにおける様々な疾患成立の機構を解明するためのモデルシステムとなると期待されます。 この成果は、The Journal of Biological Chemistry の3月5日号に掲載されました。
参考資料 [PDF:226キロバイト]
Takashi Sakudoh, Tetsuya Iizuka, Junko Narukawa, Hideki Sezutsu, Isao Kobayashi, Seigo Kuwazaki, Yutaka Banno, Akitoshi Kitamura, Hiromu Sugiyama, Naoko Takada, Hirofumi Fujimoto, Keiko Kadono-Okuda, Kazuei Mita, Toshiki Tamura, Kimiko Yamamoto and Kozo Tsuchida
A CD36-related Transmembrane Protein Is Coordinated with an Intracellular Lipid-binding Protein in Selective Carotenoid Transport for Cocoon Coloration First Published on January 6, 2010, doi:10.1074/jbc.M109.074435 March 5, 2010 The Journal of Biological Chemistry, 285, 7739-7751. 問い合わせ先など
【掲載新聞】 3月25日木曜日:化学工業日報 トップページ > プレスリリースリスト > 善玉コレステロールの輸送体がカイコの繭に色を付けることを発見 |