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プレスリリース
平成22年1月15日
独立行政法人 農業生物資源研究所

昆虫の脱皮を制御する複雑なメカニズムを解明

- 害虫の発育を阻害する新たな農薬開発につながることが期待 -


ポイント
  • カイコの脱皮ホルモンの合成を抑制するペプチド(PTSP)の受容体が、ハエで再交尾を防止する性ペプチドの受容体と同一であることを証明。
  • 昆虫の脱皮ホルモン合成の制御は予想以上に複雑で、中枢神経のみならず末梢神経によっても制御されることを解明。
  • 害虫の発育を阻害する新たな農薬開発につながることが期待。

概要                                                                                             

農業生物資源研究所、東京大学、名古屋大学、浙江大学、スロバキア科学アカデミーの研究グループは、カイコの脱皮ホルモンの合成を抑える前胸腺抑制ペプチド(PTSP)の受容体が、ハエの再交尾を防止する受容体と同一であることを明らかにしました。

昆虫の脱皮や変態は、前胸腺という胸部にある器官から分泌される脱皮ホルモンによって引き起こされます。私たちの研究グループは、カイコの脱皮ホルモンの合成を抑える神経ペプチドの一種であるPTSPの受容体を特定し、ハエで再交尾を抑える作用をもつ性ペプチドの受容体と構造が同じであることを示しました。また、PTSPが末梢神経で合成されることも明らかにしました。これまでに、脳などの中枢神経で合成された物質によって脱皮ホルモン合成が制御されることは知られていましたが、今回の結果から、末梢神経によっても制御されることが初めて明らかにされました。

今後、カイコで得られた受容体の情報を利用して、ウンカなどの害虫防除に有効な新規の農薬開発につながることが期待されます。

予算:科研費基盤研究(B)(H21〜23年)、イノベーション創出基礎的研究推進事業(H21〜25年)

参考資料 [PDF:197キロバイト]


Yamanaka N., Hua Y-J., Roller L., Spalovska-Valachova I., Mizoguchi A., Kataoka H., Tanaka Y. (2010)
Bombyx prothoracicostatic peptides activate the sex peptide receptor to regulate ecdysteroid biosynthesis.
Proc. Natl. Sci. USA. doi: 10.1073/pnas.0907471107
OPEN ACCESS ARTICLE

問い合わせ先など                                                                              

研究代表者:(独)農業生物資源研究所 理事長石毛 光雄
研究推進責任者:(独)農業生物資源研究所 制御剤標的遺伝子研究ユニット
主任研究員 田中 良明
電話番号:029-838-6104、電子メール:yoshiaki@affrc.go.jp
研究担当者:東京大学大学院 新領域創成科学研究科 教授片岡 宏誌
学振特別研究員 山中 直岐
名古屋大学大学院 理学研究科 生命理学専攻 准教授溝口 明
広報担当者:(独)農業生物資源研究所 広報室長川崎建次郎
電話番号:029-838-8469


 【掲載新聞】 1月18日月曜日:化学工業日報、1月19日火曜日:日経産業新聞、1月29日金曜日:朝日新聞、科学新聞

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