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カイコ濃核病ウイルス抵抗性遺伝子の単離に成功- ウイルスはカイコ中腸の膜タンパクを利用して感染する -農業生物資源研究所と東京大学は、カイコの形質突然変異の1つであるカイコ2型濃核病ウイルス抵抗性遺伝子(nsd-2)の単離に成功しました。 カイコ濃核病ウイルスは、カイコの病気として古くから知られていますが、抵抗性の品種や系統にはどれだけ大量のウイルスを与えてもまったく感染しない抵抗性のカイコ系統があることが分かっています。このウイルス抵抗性は単一の遺伝子によって支配されており、その遺伝子が第17連鎖群上にあることはすでに明らかにされていましたが、遺伝子の本体や機能についてはまったく不明でした。 今回、カイコゲノム情報を利用することによってこの遺伝子の単離に成功しました。また、遺伝子の働きを解析した結果、この遺伝子がカイコの中腸だけで発現する膜タンパク質の遺伝子であり、ウイルスはこのタンパクを介して細胞内に侵入することが推察されました。すなわち、抵抗性のカイコは、この遺伝子の塩基配列の後半部分を失っているため、完全なタンパク質をつくれず、ウイルスが中腸細胞内に侵入できないと考えられました。また、抵抗性のカイコに、感受性カイコが持つ遺伝子を遺伝子組換えにより導入したところ、感受性に変わったことにより、この膜タンパク質が抵抗性の原因であることも明らかになりました。 ウイルス抵抗性の原因遺伝子が単離できたことで、本ウイルスの感染機構の解明が大きく進展するとともに、カイコゲノム情報を利用したカイコ有用遺伝子の単離が一層加速化するものと期待されます。成果の概要は、米国科学アカデミー紀要(PNAS;http://www.pnas.org/)に掲載の予定で、これに先立ち2008年5月21日(米国日時)にオンラインで公表されました。この成果は、農林水産省の受託研究である「昆虫テクノロジー」プロジェクト(平成14〜18年度)および「アグリゲノム(昆虫)」プロジェクト(平成19年度〜)の一環として実施されました。
Katsuhiko Ito, Kurako Kidokoro, Hideki Sezutsu, Junko Nohata, Kimiko Yamamoto, Isao Kobayashi, Keiro Uchino, Andrew Kalyebi, Ryokitsu Eguchi, Wajiro Hara, Toshiki Tamura, Susumu Katsuma, Toru Shimada, Kazuei Mita, and Keiko Kadono-Okuda
【掲載新聞】 5月29日(木):日経産業新聞、6月20日(金):化学工業日報、 7月21日(月):日刊工業新聞、8月29日(金):科学新聞 [ 農業生物資源研究所トップページ ] [ プレスリリースリスト ] |