理事長挨拶
第3期中期計画の推進について
農業生物資源研究所(NIAS)は、2001年4月1日に農林水産省所管の独立行政法人として設立された、我が国最大の農業分野の基礎生命科学研究所です。植物・昆虫・動物などさまざまな農業生物の生命現象の総合的な理解を通じて、生物機能の開発とその利用を進め、世界的な食料・環境問題の解決に向けた革新的農業技術の開発や新たな生物産業の創出を目指しています。発足して10年たちますが、この間、第1期中期目標期間(2001〜2005年度)には、イネゲノム全塩基配列の解読、カイコの遺伝子組換え技術の開発、遺伝子組換えブタの作出等、また、第2期中期目標期間(2006〜2010年度)には、イネゲノム配列を利用した効率的育種技術の開発、カイコ及びブタのゲノム塩基配列概要の解読、農業上重要な形質に関わる遺伝子機能の解明等、世界をリードする基礎的・先導的研究成果を上げてまいりました。
2011年4月になり新年度を迎え、第3期中期目標期間がスタートしました。
私たちの研究アプローチは、生命体の設計図である遺伝子情報を全て調べるゲノム研究と地球上の有用な農業生物を集め利用する遺伝資源研究を二大基盤として、イネや家畜のような農業生物の性質を根本的に解明し、その上で優れた生物機能を農業技術や産業技術に活かすというものです。第3期の開始にあたって、これらの研究を強力にかつ効率的に推進するため、3つの研究センター(農業生物先端ゲノム研究センター、遺伝子組換え研究センター、遺伝資源センター)と3つの研究領域(植物科学、昆虫科学、動物科学)を立ち上げました。新体制では、センター長・領域長の強力なリーダーシップの下、主に以下の課題を実施していきます。
- 農業生物の遺伝資源の充実と活用の強化
- 農業生物のゲノムリソース・情報基盤の整備・高度化
- 農作物や家畜の生産性向上を目指した生物機能の解明
- 農作物や家畜の生物機能を高度に利用するための、病原菌等との生物間相互作用の解明と利用技術の開発
- 新たな生物産業を創出するための生物機能の利用技術の開発
この10年間に、私たちは、2004年に国際コンソーシアムのリーダーとして世界で初めての作物ゲノム、イネゲノムの全塩基配列を完全解読しました。その成果はその後の農業研究の進歩に大いに貢献し、世界に大きなインパクトを与えるものとなりました。今後も大きなインパクトのある研究成果をあげていくことによって、農業分野の世界の中核的な研究機関を目指していきます。第1期と第2期を通じて、研究所には遺伝資源をはじめ、イネ、カイコ、ブタゲノム研究で蓄積されてきた膨大なリソースがあります。大きな成果を上げるためには、この貴重な研究リソースを徹底利用し、先進性のある研究ターゲットを見いだしていきます。また、大きな課題へチャレンジする研究マインドが大切だと考えます。小さな、細切れの研究をいくら積み重ねても先進性の高い研究にはならず、インパクトの大きな成果にはつながりません。第3期、農業生物資源研究所は、遺伝資源、ゲノムリソースやこれまでの研究蓄積を土台として、次世代ゲノム育種法、コムギや害虫のゲノム解読、遺伝子組換え技術の実用化などの大きな課題にチャレンジしていきます。
農業生物の潜在能力を最大限に引き出すためのアプローチとして、遺伝子組換え技術が持つ可能性は非常に大きいものがあります。第3期の大きなチャレンジとして、研究所独自の技術に支えられたイネ、カイコ、ブタの遺伝子組換えについて実用化に向けた研究開発を進めていきます。遺伝子組換え技術の実用化においては、遺伝子組換え体の安全性を研究結果に基づいて科学的に実証して、同時に、医農工連携研究により有効性を実証し本格的に遺伝子組換えの実用化をすすめます。遺伝子組換え研究においては、安全第一、法令遵守を徹底して実施することは研究を進める上での大前提であり、そのために万全を期します。
農業分野の生命科学分野を担う研究所として、安全第一に研究開発を進め、一般社会の理解を得て、日本の農業及び新産業創出に貢献することが大事と考えています。バイオテクノロジーをはじめとした先端科学研究は進展が著しく、国際的な競争も熾烈な分野でありますので、新しい体制の下、役職員一同、一丸となり相当な覚悟を持って研究開発と業務運営に邁進してまいります。関係各位のご支援とご協力をお願いいたします。
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