平成24年2月15日(水曜日)に群馬県前橋市の群馬県庁で、群馬県と生物研が主催するシンポジウム「カイコ産業の未来」が開催されました。
平成23年は遺伝子組換えカイコを利用して作られた検査薬や化粧品が初めて市場に出荷され、遺伝子組換えカイコの実用化元年を迎えました。次の展開として、遺伝子組換えカイコを用いた医薬品の開発が大いに期待されていますが、医薬品の承認に向けては高いハードルが待ち受けていると考えられます。そこでシンポジウム4回目となる今回は「遺伝子組換えカイコを用いた医薬品開発」に焦点を当て、その現状と課題について討論し、今後の展望を探りました。
シンポジウムでは生物研の新保理事による基調講演に加え、遺伝子組換えカイコを用いたバイオ医薬品や診断薬の開発と製造、遺伝子組換えカイコの大量飼育などについて話題提供があり、私も「遺伝子組換えカイコを用いた技術開発」について講演しました。本シンポジウムには、企業・公的研究機関・県・農協・農家・マスコミなど様々な分野の方124名が参加し、またその内容が業界紙「日経バイオテク」で特集されるなど、大いに注目されていることが窺えました。シンポジウム後には、遺伝子組換えカイコの飼育施設としての活用の準備が進む、前橋市の稚蚕共同飼育所の見学会を行いました。稚蚕共同飼育所では一度に約30万頭のカイコが飼育できるため、近年内に遺伝子組換えカイコの大量飼育が可能になると期待されます。
外国との繭や生糸の価格競争によって、日本の養蚕業の灯は消えようとしています。これに対抗するため、国内で最も養蚕が盛んな群馬県では、高付加価値化が可能な遺伝子組換えカイコの飼育に力を入れようとしています。日本の養蚕業の灯を消さないためにも、遺伝子組換えカイコのさらなる実用化が急がれます。